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================================= 芥川を読もう!第1回 ================================= はじめに・・・・ ================================= 【歯車】第一話 「一、レインコート」 ================================= 僕は知り合いの結婚披露宴に行くために、鞄を一つ下げたまま、 東海道のある停車場へその奥の避暑地から車を飛ばした。 自動車の走る道の両側は、大抵松ばかりが茂っていた。 上り列車に間に合うかどうかはかなり怪しいのに違いなかった。 自動車にはちょうど、僕の他にある理髪店の主人も乗り合わせていた。 彼は棗(なつめ)のようにまるまると肥った(ふとった)、 短い顎鬚(あごひげ)の持ち主だった。 僕は時間を気にしながら、時々彼と話をした。 「妙なこともありますね。××さんの屋敷には昼間でも 幽霊が出るって云うんですが」 「昼間でもね」 僕は冬の西日の当たった向こうの松山を眺めながら、 善い加減に調子を合わせていた。 「もっとも天気の悪い日には出ないそうです。一番多いのは 雨の降る日だって云うんですが」 「雨の降る日に濡れに来るんじゃないか?」 「ご冗談で。・・・しかしレインコートを着た幽霊だって言うんです」 自動車はラッパを鳴らしながら、ある停車場に横着けになった。 僕はある理髪店の主人と別れ、停車場の中へ入っていった。 すると果たして上り列車は2〜3分前に出たばかりだった。 待合室のベンチにはレインコートを着た男が 1人ぼんやりと外を眺めていた。 僕は今聞いたばかりの幽霊の話を思い出した。 が、ちょっと苦笑し、とにかく次の列車を待つ為に 停車場のカフェへ入ることにした。 <つづく> ================================= 今日はここまで! このあともおそらくこんな感じの文面になると思いますが、 「読みにくい」「こうして欲しい」などの ご意見、ご要望がありましたら、遠慮なく下記のアドレスに 送信ください。善処させて頂きます。 ================================= 発行者 みつめ mitsume@yan.ne.jp ================================= 参考図書 株式会社新潮社発行 新潮社文庫 「河童・或阿呆の一生」 著者 芥川龍之介 (なお芥川龍之介の著作権は消滅しております) ================================= |